古庭に鶯啼うぐいすなきぬ日もすがら　　　　　蕪村
うぐひすうぐいすの啼くや小さき口明くちあけて　　　　　蕪村
うつつなきつまみ心の胡蝶こちょうかな　　　　　蕪村
草霞くさかみ水に声なき日ぐれかな　　　　　蕪村
つつじ咲いて石移いしうつしたる嬉しさよ　　　　　蕪村
菜なの花や月は東に日は西に　　　　　蕪村
花の香や嵯峨さがのともし火消ゆる時　　　　　蕪村
春の海終日ひねもすのたりのたり哉かな　　　　　蕪村
はるさめや暮くれなんとして今日もあり　　　　　蕪村
ゆく春やおもたき琵琶びわの抱きごころ　　　　　蕪村
雲を呑のんで花を吐くなりよしの山　　　　　蕪村
大和路やまとじの宮みやもわら屋もつばめかな　　　　　蕪村
梅咲うめさきぬどれがむめやらうめじやじゃやら　　　　　蕪村
陽炎かげろうや名も知らぬ虫の白き飛ぶ　　　　　蕪村
わか鮎や谷の小笹こざさも一葉行く　　　　　蕪村
うたた寝のさむれば春はるの日くれたり　　　　　蕪村
日は日くれよ夜は夜明けよと啼く蛙かわず　　　　　蕪村
梅が香の立ちのぼりてや月の暈かさ　　　　　蕪村
海手うみてより日は照りつけて山ざくら　　　　　蕪村
遅おそき日のつもりて遠き昔かな　　　　　蕪村
春の暮家路いえじに遠き人ばかり　　　　　蕪村
春雨や小磯の小貝こがい濡ぬるるほど　　　　　蕪村
白梅や誰たが昔より垣の外　　　　　蕪村
菜なの花や昼ひとしきり海の音　　　　　蕪村
鶯うぐいすのあちこちとするや小家がち　　　　　蕪村
しら梅に明あくる夜ばかりとなりにけり　　　　　蕪村

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